NEWS 生産者インタビュー~農家の成長を支えるコミュニケーション~Vol.2

八千代市 稲垣氏

食を支える農業...現役農家のお二人に聞きました !

 「農業」や「農家」というキーワードを聞いたら、若い世代や農業・農家を知らない方々は何を考えるでしょうか。「農業を取り巻く環境は年々厳しさを増している」といったニュースを目にしたり耳にしたりしているかもしれません。もし、農業を始めたら資金の調達や技術・資格取得の必要性をかなり迫られるのではないか。情報が溢れている現代社会において、陥りがちなイメージだけが先行してしまっているかと思われます。
 今回は、元気で逞しく農家を続けているお二人にスポットを当て、さまざまな質問にお答え頂きました。
 農家を始めたキッカケや技術をどのように習得したのか。情報が溢れる現代でどういった情報を取捨選択し、農業に活かしているのか。
 さらには、心構えや考え方・今に至る行動力まで、これから農業に挑戦してみたい方々には必見です。

コミュニケーションというカタチ

 「コミュニケーション」と言われると、喋りが上手いことや社交的であることが直ぐに浮かぶと思われます。しかし、今回インタビューをさせて頂いたお二人のコミュニケーションのベースは、知識や話術・資格などではなく、行動力だったり実践力、前に進もうとする推進力や何事にも挑戦するチカラがベースになっているのです。喋りが上手くなくとも必要としてくれる人達に対しての接し方や実践力、さまざまな形で繋がった人達を大事にする姿勢、磨きあげた自分の技術と経験で育てたあげた安全・安心な食材そのものが、さまざまな人とのコミュニケーションに直結しているのです。〝多少の努力では真似できないような行動力や技術力、人が惹かれる食材、信用・信頼を紡ぐ姿勢〞こそがこれからの社会におけるコミュニケーションの本質であり、これからの農業に必要な要素なのかもしれません。
 

インタビュー本編【八千代市 稲垣氏】

会社員から農家に、始まりは1冊の本とYouTube

 バリバリ仕事をしていた会社員時代に、祖父から田んぼを引き継いだことで私の農家人生は始まりました。最初は農業について何もわからなかったのでとりあえずトラクターの運転はYouTubeの動画を参考にしてみたり、今でも使っている野菜の本や農家の方のブログを読んで色々な野菜を作ってみたり、毎日が試行錯誤の連続でした。広報誌の広告をみて新規就農セミナーに応募したり、そこで出会えた農家の方から栽培方法を聞いたり肥料の相談をするなどやれることはすべてやりました。やってみて向いていなかったら他の方法を試す感覚でしたね。

会社員時代の経営的な視点を活かした農業経営

 会社員時代で培った無駄をなくすという考えが農業でも活きています。就農当初は新品の農機が高くて買えないということもあって中古でまかなっていました。農作物が出来てから品種が自分にあっているかを判断し、収益が見込めるようになったら新品を購入していました。また情報収集をして野菜の相場であったり、消費者が何をどの値段でどれくらいの量を買うのか、夏と冬の野菜の売れ行きの違いを把握することで何をいつまでに収穫して売ればいいのか計画が立てられます。そうすることで作業を「見える化」でき、効率的に人を雇用することができるのでパートの方には都合のよい時間帯に合わせて手伝いに来てもらっています。

安くておいしい野菜を 「ママ友とボランティアの存在」

 農業経営をするうえで安くておいしい野菜を提供することが前提にあるので、無人直売所をやったり運営は基本的にパートでまかなっています。パートとして妻のママ友達に協力してもらっています。時には規格外で売れなくなってしまった野菜を持ち帰ってもらっているのでフードロスの削減にもなり助かってます。例年、さつまいもやジャガイモなどの収穫時期には多くのボランティアを募集します。作業が終わった後はみんなで収穫した新鮮な野菜をその場で茹でたり焼いたりして食べます。参加者のなかには畑に入ったことがなかったり、収穫したばかりの野菜を食べたことがない人もいるので、そういう人たちに「おいしい」「楽しい」と思ってもらえるのは嬉しいです。決まった時期に継続して募集することで人が集まりやすくネットワークも広がっていくので野菜の評判も広がり、夏には無人直売所が遠方からとうもろこしや枝豆を買いに求める人でいっぱいになります。

ちょっとした気遣い、それが農業の支え

 無人直売所をやっているなかで「お客さんを知る」ということを大事にしています。野菜の品目や生産量を調節したり、料理レシピやおいしい食べ方を知りたいという声があればそれらを記載したお品書きを野菜と一緒に袋詰めしたり、一目で価格がわかりやすいようにPOPの色や文字の大きさを工夫するなどできるかぎりお客さんの要望に応えられるようにしています。こういうことを繰り返すうちにお客さんからお礼の手紙をいただくようになり、スーパーのような同じ商品が並ぶ場でも自分の野菜を手にとっていただけることが増えていきました。当たり前のことですが小さな気遣いやおもてなしの積み重ねによって、私の農業は支えられていると日々実感しています。ちなみにPOPやお品書きは妻に作ってもらっているので非常に助かっています。

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